舞台となる県立橘第一高等学校。この地域では東大に進学するよりもこの高校に合格することが高いステイタスであり、卒業した後も、一流大学を卒業した者より学高学歴と見做される。同窓会長やOBの教師たちの偏愛とも言える母校愛。そうした中、入試の前日に「入試をぶっつぶす!」と大書された紙が各教室の黒板に張られ、ネットの掲示板では「名無しの権兵衛」を名乗る人物が宣戦布告を行い、見えない敵から脅迫を受ける……。
そんな母校に今、一大事が起きているのである。毎年この時期に送られてくる同窓会報16ページのうち5ページまでもが割かれて大騒ぎになっているその大事とは、「大講堂使用中止問題」である。昭和29(1954)年に、当時の金額で1,265万円、今の値段にすれば2億円超とも言われる巨費を投じて建築された大講堂は、耐震診断の結果により、昨秋より使用が停止されているのだそうだ。同窓会長のコメントをそのまま引用すると、「高校の歴史と共に歩んできて多くの卒業生の心に残っている大講堂を出来ることならば維持・保存・使用出来るように切望しています。もしそれが不可能であるならば講堂機能の建物を新たに整備していただきたいと願っております(原文のママ)」とのことで、然るべき立場の人が公式にこのような発言をするのだから、関係機関には相当なレベルでの陳情なり要望がなされていくのであろう
去斑。
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